今いる場所、過去いた場所で捉えるユーザーインテント

ロケーション広告には、大きくわけて二つの広告配信パターンがある。ユーザーの現在地に向けて配信する現在地配信。もう一つが、ユーザーの訪問履歴をベースとした、オーディエンス配信である。

現在地配信

現在地配信のキャンペーンの主な目的は、店舗やイベントへの集客であることが多い。特定の店舗からラディアルフェンスを設定し、半径~km以内に落ちた座標に対して広告配信を行う。周辺ターゲティングとも呼ばれ、衝動的なニーズを生む出すことに優れている。

ユーザー自身に関係する、もしくは興味があるプロダクトやオファリングを広告接触し、それが近辺にあるとわかった際、「行ってみるかな」と思わせる手法だ。

 例えば、アパレルブランドが、集客をする目的で、店舗周辺1km以内にいるユーザーに配信を行うと言った具合だ。 加えて広告接触したユーザーに対して、スムーズな導線を引くことで、衝動的なニーズを顕在化させ、反応率や来店率を上げる仕組みも存在する。

 例えば、バナー広告がロードされるタイミングで、最寄り店舗までの距離や店舗名を挿入するスマートなクリエイティブの仕掛けだ。ユーザーのアテンションを引くことにもプラスに作用し、結果的に、広告インプレッションの価値や反応率・クリック率の上昇が見込める。

 また、バナー広告のクリックイベントがあった際、ブランド側のウェブサイトに遷移させるのではなく、動的にランディングページを生成する仕組みも存在する。この動的なランディングページに上に、最寄り店舗の住所や地図などを配置し、スマートフォンに標準搭載されているナビゲーションのアプリをローンチさせる「経路ボタン」を仕掛けることもできる。ユーザーが、このブランドの商品やプロモーションに興味がある場合、経路ボタンを押すだけで、OSデフォルトのマップアプリが立ち上がり、該当店舗までのナビゲーションをスムーズに行うことができる。

 また現在地配信は、ブランドが自社の店舗の周辺に対して広告配信を行うだけでなく、意味のあるPOI周辺に配信し、マイクロモーメントを捉えることで、ユーザーに対して印象を残すことにも使用される。例えば、オムツの商品の広告を、幼稚園や保育園の周辺で、登校やお迎えの時間に配信する。子供のことを考えているタイミングになるので、オムツ広告は非常に自然に受け入れられ、視覚的インパクトも大きい。子供を連れて帰宅する帰りに、最寄り対象店舗に立ち寄る流れを作ることが期待できる。

オーディエンス配信

 ユーザーのオフラインの行動履歴は、潜在的なニーズ、顕在化されたニーズを把握できる貴重なデータだ。例えば、オンラインでGoogleなどを使用し何かを検索しようと考えたとき、10つの検索を行うのに、場合によっては10分もかからない。検索ワードの組み合わせで、潜在的なニーズなのか、顕在化されたニーズなのかは、ある程度判断することはできるが、常にモバイル端末が手元にある状態で、いかなる時でも検索できる現在の利便性は、ユーザーのインテントを断片化、複雑化している。

 オフラインのユーザーの動きは、その利便性の真逆を行く。

 実際に、自分の足を運んで目的の場所に訪れるため、確実に時間と労力がかかる。つまり、どこかに訪問したという事実は、そのユーザーの明確な意思(インテント)、時間と労力の投資を表している。それに対して、ターゲティングできるのが、訪問履歴をベースとしたオーディネンス配信だ。

 例えば、直近二週間以内に自動車ディーラーに訪問した人は、自動車の購入に強い意志があると理解できる。そのユーザーに対して、自動車関連の広告を現在地に関係なく配信する。ユーザーの意図は明確なので、衝動的なニーズを生み出す現在地配信とは目的が異なる。

 オーディエンス配信に使用するロケーション履歴の集合体(セグメントと呼ばれる) は、ロケーションのカテゴリ単位(例: アパレルブランドを訪問した人)、ブランド単位(例: ユニクロを訪問した人)、若しくは、その組み合わせで作成され、標準化された形で提供される。マーケターの細かいニーズに応えられるように、「カスタム」といった形式で、もっと複雑なデータポイントを組み合わせることも可能だ。

 例えば、「居住地が東京都港区で、想定世帯年収が1000万円以上で、直近2週間以内に、高級外車ディラーに訪問した人」などだ。当然ではあるが、ウェブ広告のオーディエンス配信と一緒で、ターゲティングを細かくすればするほど、リーチできるユーザーは減る。

 また、ユーザーの行動を「線」で追い、特徴的な訪問パターンを持っているユーザー群をセグメント化することもある。いわゆる「行動ターゲティングセグメント」だ。米国でよく出てくるセグメント例として、「Soccer Mom」がある。言葉の意味は、「中流家庭で子供の教育やアフタースクール活動への支援に積極的で、主に郊外に住む母親」を指す。ロケーションを線で追って表現すると、「午前中に幼稚園、小学校、中学校にいき、お昼にお迎えに出かけ運動場に子供のスポーツ活動を見守り、夕方にはスーパーに行き、週末には、子供の試合の応援で遠方の競技場に向かう」と言った感じだ。セグメントの作成にあたり定義を先行しそれに合致したロケーションを選定していくマニュアルな手法や、特徴的な行動をしているグループを数学的に見つけ(クラスター分析など)、後追いで、セグメント名をつける手法がある。米国では、パネルデータ提供会社にセグメントデータを送り、実際に作成したセグメントが適切なグループになっているか、第三者の手を借りて信頼性を高めることも行っている。

新しい現在地配信 (インストア配信)

ロケーション広告配信は、今後新しい仕組みが誕生してくると思われる。ここではGroundTruth社が提供している二つの現在地配信のテクノロジーを紹介したい。

 一つ目は、On-premise(オンプレミス)ターゲゲティング、インストアターゲティングだ。特定の店舗の建物の中にいるユーザーに対して広告配信を行う手法だ。店舗の建物内を把握するには、GroundTruth社独自技術のBlueprintsの活用が必須であることは、前述のとおりである。

 この手法は、店頭POPに近い、プロダクトとのラストワンマイルを埋める非常に効果的なターゲティングである一方で、購入検討期間と店舗での滞在時間を考慮する必要ある。

 例えば、価格帯の低い消費財などは、コンビニやドラッグストアやスーパーに置かれているが、店頭での滞在時間は短く、モバイル端末を積極的に触っているケースは少ない。つまり、「買ったらさっとと出る」メンタリティで、広告接触機会は作りづらい。また、仮に広告でメッセージングできたとしても、その短時間でのブランドスイッチは極めてハードルが高い。消費者は、いつもどおりのプロダクトを買うか、衝動的にパッケージデザインや店頭POPを参考に新しい製品を買うからだ。消費財の勝負どころは、流通店舗へ訪問する前にどの程度インパクトを与えることができるかに左右される。

一方で、価格帯が高く検討期間が長い商材は、総じて、店頭での滞在時間も長い傾向にあるので、インストア配信がうまく作用する可能性が高い。例えば、自動車ディーラーなどがそれに当たる。試乗の順番待ちや、販売員の対応待ちなど、滞在時間つまり可処分時間は長い。自動車は、すぐに購入というよりは、じっくり検討したい商品である。そのため、店内での待ち時間で、別の車種の情報や、他メーカーの最寄りのディーラーの存在をタイムリーに得られることは、消費者にとって価値のある情報と言える。

  GroundTruth社の更なる新しい現在地配信として、Geoblock(ジオブロック)というイノベーションもある。これは、まず日本全国の道路以外の敷地部分をブロックとして、ユニークなIDを振り分ける。次に特定の店舗へ良く訪問しているユーザーは、どのブロックIDから来ているかを判別する。ターゲティングの際には、ロイヤルティーの高いユーザーの訪問元ブロックIDに対して現在地配信を行う、と言った仕組みである。

このターゲティングのポイントは二つある。一つ目は、ロイヤルティカスタマーに対してのみ、リアルタイムに集客をかけられる点だ。衝動的なニーズを周辺全体に仕掛けるのではなく、得意先に対してのみ特定のメッセージングができる。

 もう一つ目の利点は、このターゲティングはブロックに対して配信されるので、いわゆるlook-a-like(似たユーザーを発見する)の可能性があるところだ。ブロックには、10世帯から20世帯が居住しており、その家族構成や世帯年収、そして良く地域で訪問する店舗なども似通ってくるはずだ。仮にそのブロックで2、3世帯がロイヤルカスタマーだとすると、そのブロック内の他の世帯は、類似した特徴を持つ優良な見込み顧客、と考えることができる。その優良見込み顧客に対しても、同時に広告配信できる点は非常に有益である。